2008年07月17日
第5話
■作者より皆さんへ
知らない用語がちょっと出てくると思います。
そのときには恐れ入りますが、右のカレンダーの上にある
検索窓で検索をかけてください!
それでは、始まります!
カウンターに座る僕の彼女の元へ、有吉さんはかけて行きました。
「あ、どうも。康平君の彼女さんですよね?」
「・・・はい、そうですけど。」
完全に不振な目で見ている彼女。
僕は有吉さんが何か変なことを言い出さないかと
ひやひやしていました。
「僕、有吉大吉って言います。今康平君にビリヤード教えています。
大吉って呼んでね!」
陽子はちょっと引いていました。気持ち悪さ全開です。
「わ、私は、加納陽子です。ここ2週間ほとんど康平から連絡が
来なかったので、今日は何してるのか見に来ました。」
ずっと練習に打ち込んでいたので、ビリヤードをはじめたって
いう話と、店の名前だけメールで伝えて、後はずっと陽子と
連絡を取っていませんでした。
「いや〜、そうか〜。こんなかわいい子と付き合っていながら
ダメだよね〜康平君は。まあそれでもそれだけ真剣にビリヤードに
打ち込んでるってことだから、陽子ちゃん、勘弁してあげて。
お詫びに今日は康平君が焼肉おごってくれるって言うし。
ね、康平君。」
有吉さんは陽子の肩をもみ、にやにやこちらを見ながら言いました。
完全に弱みを握られているので、今日は言うとおりにします。
「じゃあ、今日はそろそろ終わりにしてご飯食べに行きましょうか。」
カランコロン
ちょうどその時、お店に誰かが入ってきました。
入ってきたのは、ホスト野郎でした。
マスターと二言三言交わして、こちらへやってきました。
「だいきっちゃん、久しぶり。」
ホスト野郎は有吉さんに声をかけてきました。
「久々だな。」
あまり楽しそうな顔をしていない有吉さんでした。
「球撞いてるの?最近。」
「そうそう、面白いやつが入ってきてさ。
こいつ、康平って言うんだけどね。」
ホスト野郎は僕に軽く会釈をしました。
「どうも、達也です。」
北川達也、というのが彼の名前でした。
初めて近くて見た顔は小さく、そしてとても整っていました。
まだ年齢は若く、僕よりも2つ上の22歳でした。
格好は、黒のスーツに胸元まで開けられた黒のワイシャツを着込み、
その下から見える肢体も日焼けサロンで焼いているのか真っ黒に焼けて
おり、シルバーのネックレスがド派手に光っていました。
「クラスは?」
達也さんは僕に聞いてきました。
「まだはじめたばっかだよ。」
有吉さんが僕の代わりに答えました。
ビリヤードには「クラス」というレベル分けがありまして、
下からC、B、A、SAとなっています。
いろんなところでいろんなクラス分けが存在するのですが、
単純に、初心者、中級者、上級者、全国にその名が轟く変態、
と思ってもらえればOKです。
僕はまだ本当に始めたばかりなので、このクラス分けにすら
入れないレベルでした。
「記念に達也と撞いてみたら。
達也が球撞いているところみたいだろ?
こいつあんまり撞きに来ないからさ、今見なかったら
次はいつになるかわかんないからね。はははっ。」
マスターがカウンター越しに言ってきました。
「来ますよ〜またすぐに。でも、マスターが言うなら、
せっかくだからやろうか?康平君。」
「はいっ!」
達也さんの球が見られる!ただそれだけに興奮をしていました。
勉強になるだろうからということで1回だけ、ナインボールの
2-5セットマッチ、500円、つまり僕が2回ナインボールを
入れたら僕が勝ち、その前に達也さんが5回ナインボールを
入れたら達也さんが勝ちというルールです。
僕らはカウンターに一番近い花台でやることになりました。
じゃんけんで順番を決め、達也さんのブレイクからゲームは
始まりました。
彼のブレイクは台の左側から行います。
ドカーーーーーーン!
けたたましい音とともに、1番、4番、5番の球がポケットに吸い込まれ、
手球は台の中央に止まりました。
達也さんは簡単な2番をノータイムで(まったく考えることなく)沈め、
そのまま僕に順番が回ってくることなく、9番まで入れてしまいました。
これで0−1。
2ゲーム目、ブレイクはまた達也さん。
再び豪快なブレイク。
1番、2番がポケットインし、取り出し(最初に狙う的球)の3番は、
ほぼ一直線のイージーボール。
何の問題もなく9番まで進み、これで0-2。
次のラック(ナインボールで最初にひし形に組むこと)を組み終わると、達也さんはテーブルをぐるりと一周し、
僕が組んだラックを上からチラッとのぞきました。
そしていつもブレイクを撞いている場所から手球を
もっと真ん中近くに寄せて、いつもより軽めにブレイクをしました。
するとラックの真ん中にあった9番ボールはころころとポケットへ
向かい、そのまますとんと落ちてしまいました。
これは後で知ったことですが、ラックの組み方でナインボールは
ポケットに狙うことができるんです。僕がラックを組むのを
遠くから見ていた達也さんですが、もしかしたら…と思って、
ラックを上から確かめたそうです。
これで0-3。
僕の出番なし。
そして4ゲーム目もブレイクで1番が入ります。
次は2番ですが、達也さんはそれをいれずに台の上の
3番と4番がくっついている状態を崩し、手球をレールぎわに
寄せて2番を撞きづらいようにしました。
これは、セイフティーと呼ばれているもので、次の球等が
入れるのが難しい時に、わざと前の球をはずし相手に不利な
状態で順番をまわすプレーです。
やっと僕の順番になりましたが、2番と手球はテーブルの
短クッション(長方形のテーブルの短い側)に両方の球が
くっついていました。
こんなんじゃ入れられません。
僕は当てるのが精一杯で、当てた球はすごくイージーに残り、
達也さんはそのまま9番まで取りきってしまいました。
0-4。
そして下手をしたら最後になってしまう第5ゲーム。
ブレイクノーインで1番から順番が回ってきました。
しかしその1番も遠くに離れていて、簡単にはずしてしまいました。
そのまま達也さんは9番まで取りきって終了しました。
0-5。僕が撞いた回数は2回。
初めて2週間の人間と、その人間がプレーを見て
あこがれ続けた人間の差が今現在はこの結果でした。
「ありがとうございました。」
達也さんが僕に握手を求めてきました。
「・・・あの、もう一回いいですか?」
僕は何も考えずに話していました。
この続きは第6話で!
続きを読みたい人は
下の人気ブログランキングを
クリックお願いします!
知らない用語がちょっと出てくると思います。
そのときには恐れ入りますが、右のカレンダーの上にある
検索窓で検索をかけてください!
それでは、始まります!
カウンターに座る僕の彼女の元へ、有吉さんはかけて行きました。
「あ、どうも。康平君の彼女さんですよね?」
「・・・はい、そうですけど。」
完全に不振な目で見ている彼女。
僕は有吉さんが何か変なことを言い出さないかと
ひやひやしていました。
「僕、有吉大吉って言います。今康平君にビリヤード教えています。
大吉って呼んでね!」
陽子はちょっと引いていました。気持ち悪さ全開です。
「わ、私は、加納陽子です。ここ2週間ほとんど康平から連絡が
来なかったので、今日は何してるのか見に来ました。」
ずっと練習に打ち込んでいたので、ビリヤードをはじめたって
いう話と、店の名前だけメールで伝えて、後はずっと陽子と
連絡を取っていませんでした。
「いや〜、そうか〜。こんなかわいい子と付き合っていながら
ダメだよね〜康平君は。まあそれでもそれだけ真剣にビリヤードに
打ち込んでるってことだから、陽子ちゃん、勘弁してあげて。
お詫びに今日は康平君が焼肉おごってくれるって言うし。
ね、康平君。」
有吉さんは陽子の肩をもみ、にやにやこちらを見ながら言いました。
完全に弱みを握られているので、今日は言うとおりにします。
「じゃあ、今日はそろそろ終わりにしてご飯食べに行きましょうか。」
カランコロン
ちょうどその時、お店に誰かが入ってきました。
入ってきたのは、ホスト野郎でした。
マスターと二言三言交わして、こちらへやってきました。
「だいきっちゃん、久しぶり。」
ホスト野郎は有吉さんに声をかけてきました。
「久々だな。」
あまり楽しそうな顔をしていない有吉さんでした。
「球撞いてるの?最近。」
「そうそう、面白いやつが入ってきてさ。
こいつ、康平って言うんだけどね。」
ホスト野郎は僕に軽く会釈をしました。
「どうも、達也です。」
北川達也、というのが彼の名前でした。
初めて近くて見た顔は小さく、そしてとても整っていました。
まだ年齢は若く、僕よりも2つ上の22歳でした。
格好は、黒のスーツに胸元まで開けられた黒のワイシャツを着込み、
その下から見える肢体も日焼けサロンで焼いているのか真っ黒に焼けて
おり、シルバーのネックレスがド派手に光っていました。
「クラスは?」
達也さんは僕に聞いてきました。
「まだはじめたばっかだよ。」
有吉さんが僕の代わりに答えました。
ビリヤードには「クラス」というレベル分けがありまして、
下からC、B、A、SAとなっています。
いろんなところでいろんなクラス分けが存在するのですが、
単純に、初心者、中級者、上級者、全国にその名が轟く変態、
と思ってもらえればOKです。
僕はまだ本当に始めたばかりなので、このクラス分けにすら
入れないレベルでした。
「記念に達也と撞いてみたら。
達也が球撞いているところみたいだろ?
こいつあんまり撞きに来ないからさ、今見なかったら
次はいつになるかわかんないからね。はははっ。」
マスターがカウンター越しに言ってきました。
「来ますよ〜またすぐに。でも、マスターが言うなら、
せっかくだからやろうか?康平君。」
「はいっ!」
達也さんの球が見られる!ただそれだけに興奮をしていました。
勉強になるだろうからということで1回だけ、ナインボールの
2-5セットマッチ、500円、つまり僕が2回ナインボールを
入れたら僕が勝ち、その前に達也さんが5回ナインボールを
入れたら達也さんが勝ちというルールです。
僕らはカウンターに一番近い花台でやることになりました。
じゃんけんで順番を決め、達也さんのブレイクからゲームは
始まりました。
彼のブレイクは台の左側から行います。
ドカーーーーーーン!
けたたましい音とともに、1番、4番、5番の球がポケットに吸い込まれ、
手球は台の中央に止まりました。
達也さんは簡単な2番をノータイムで(まったく考えることなく)沈め、
そのまま僕に順番が回ってくることなく、9番まで入れてしまいました。
これで0−1。
2ゲーム目、ブレイクはまた達也さん。
再び豪快なブレイク。
1番、2番がポケットインし、取り出し(最初に狙う的球)の3番は、
ほぼ一直線のイージーボール。
何の問題もなく9番まで進み、これで0-2。
次のラック(ナインボールで最初にひし形に組むこと)を組み終わると、達也さんはテーブルをぐるりと一周し、
僕が組んだラックを上からチラッとのぞきました。
そしていつもブレイクを撞いている場所から手球を
もっと真ん中近くに寄せて、いつもより軽めにブレイクをしました。
するとラックの真ん中にあった9番ボールはころころとポケットへ
向かい、そのまますとんと落ちてしまいました。
これは後で知ったことですが、ラックの組み方でナインボールは
ポケットに狙うことができるんです。僕がラックを組むのを
遠くから見ていた達也さんですが、もしかしたら…と思って、
ラックを上から確かめたそうです。
これで0-3。
僕の出番なし。
そして4ゲーム目もブレイクで1番が入ります。
次は2番ですが、達也さんはそれをいれずに台の上の
3番と4番がくっついている状態を崩し、手球をレールぎわに
寄せて2番を撞きづらいようにしました。
これは、セイフティーと呼ばれているもので、次の球等が
入れるのが難しい時に、わざと前の球をはずし相手に不利な
状態で順番をまわすプレーです。
やっと僕の順番になりましたが、2番と手球はテーブルの
短クッション(長方形のテーブルの短い側)に両方の球が
くっついていました。
こんなんじゃ入れられません。
僕は当てるのが精一杯で、当てた球はすごくイージーに残り、
達也さんはそのまま9番まで取りきってしまいました。
0-4。
そして下手をしたら最後になってしまう第5ゲーム。
ブレイクノーインで1番から順番が回ってきました。
しかしその1番も遠くに離れていて、簡単にはずしてしまいました。
そのまま達也さんは9番まで取りきって終了しました。
0-5。僕が撞いた回数は2回。
初めて2週間の人間と、その人間がプレーを見て
あこがれ続けた人間の差が今現在はこの結果でした。
「ありがとうございました。」
達也さんが僕に握手を求めてきました。
「・・・あの、もう一回いいですか?」
僕は何も考えずに話していました。
この続きは第6話で!
続きを読みたい人は
下の人気ブログランキングを
クリックお願いします!
help_me_out at 01:44│Comments(3)│TrackBack(0)│
トラックバックURL
この記事へのコメント
1. Posted by 啓太 2008年07月21日 00:00
こんばんわ!
私は今、まったく違うジャンルのブログをしていますが、実は、元めちゃめちゃビリヤードフリークな男でした。
ゲームの流れが手に取るように分かり、がっちり読み込んでしまいました。
ご参考までにですが、ポイントとなる場面の玉の配置などを載せてみてはいかがでしょうか?
<難しいかもしれませんが・・・>
まったくの初心者の方でもイメージできるようにすれば、もっとファンが定着しそうな気がいたします。
次回作、楽しみにしています。
私は今、まったく違うジャンルのブログをしていますが、実は、元めちゃめちゃビリヤードフリークな男でした。
ゲームの流れが手に取るように分かり、がっちり読み込んでしまいました。
ご参考までにですが、ポイントとなる場面の玉の配置などを載せてみてはいかがでしょうか?
<難しいかもしれませんが・・・>
まったくの初心者の方でもイメージできるようにすれば、もっとファンが定着しそうな気がいたします。
次回作、楽しみにしています。
2. Posted by sakura♪ 2008年07月21日 08:23
やっと5話出たぁ〜〜♪
待ってましたぁ^^
SA=全国にその名が轟く変態
柱| ̄m ̄) ウププッ
それにしても・・・達也め・・・
待ってましたぁ^^
SA=全国にその名が轟く変態
柱| ̄m ̄) ウププッ
それにしても・・・達也め・・・
3. Posted by help_me_out 2008年07月30日 02:47
>啓太さん
こんにちは。
確かにそうですね。図か〜。ちょっと考えてみます。
>sakuraさん
いつも応援ありがとうございます。
第6話UPしましたので、ご覧ください!
こんにちは。
確かにそうですね。図か〜。ちょっと考えてみます。
>sakuraさん
いつも応援ありがとうございます。
第6話UPしましたので、ご覧ください!