今回、ご紹介するのは、資料価値の高い映像です。今から24年前、1991年のUS・オープン・ファイナルの様子ですね。バディ・ホールデニス・ハッチが対戦しています。

 バディ・ホールといえば、70〜80年代を代表するスーパースターで「生ける伝説」ですね。当時46歳とはいえ、ランキングは6位と第一線でプレーしていました。数々のタイトルを制してきたホールですが、このUSオープンのタイトルだけは、まだ獲っていなかったようです。

 対するハッチは、わずか16歳でジュニアのタイトルを獲り、弱冠二十歳で、このUSオープンのファイナルまで上り詰めてきました。おそらく最年少ファイナリストだったと思われます。ハッチは後年、モスコーニカップのメンバーに選ばれるなど、今でもバリバリのアメリカン・トッププレイヤーといえるでしょう。

バディ・ホールデニス・ハッチ そんな2人の対決です。ホールは敗者ゾーンから駆け上がり、対するハッチは、あのアーチャーを破り、勝者ゾーンを上ってきたようです。老練なベテランと新進気鋭の若手、両者の勢いを表すかのような組み合わせとなっていますね。

 フォーマットは“Race to9”の勝者ブレイクとなっています。それでは、ご覧ください。



 序盤からブレイクがカギを握る攻防で、ノーインからランアウトされるという展開となります。それは中盤になっても同じく、一進一退で“5-5”に。そこから終盤にかけても、お互い1ゲームも離されない展開で、とうとうヒルヒルへ33:00辺りから
 ここでもブレイクが勝負を分けました。

 ハッチの強烈なブレイクがなんとノーイン…そこからホールがじっくりとランアウトし、勝利。

 勝負に「たられば」は厳禁ですが、あえて言わせてもらいます。仮にハッチのブレイクが入っていたら、トラブルもないですし、ハッチの勝利となっいたことでしょう。1976年にシーゲルが21歳で最年少優勝をしたのですが、その記録を更新していたかもしれませんね。

 堂々としたハッチのプレーぶり、もはや20年選手のような風格でした。あのホール相手に臆することなく、果敢にプレーしていました。16ゲーム目、ホールにリーチをかけられ、そのプレッシャーのなかセーフティー勝負に勝ち、回ってきたチャンス。渾身の(4)カット31:10辺りを入れランアウトしたハッチは、その流れのまま行くかと思われました。

 がしかし、まさかのノーイン。勝負って残酷ですよね…嗚呼。

 一方、ホールの動じない、じっくりと行くスタイルは、非常に参考になりましたね。要所要所で、若手顔負けのイレを魅せる10:00辺り27:45辺りなど、表情には出さないものの鬼気迫るプレーぶり。数々のタイトルを獲ってきたとはいえ、やはり、このUSオープンは別格ですよね。46歳にして、USオープンを初制覇したホールは、この7年後の1998年も、52歳で2度めのタイトルを獲得しています。

 USオープンのファイナルは、けっこう大味な展開になるケースがややもすればあるのですが、この年は緊張感あふれる素晴らしいゲームでしたね。様々な年度のUSオープンを観てきていますが、屈指のファイナルといえるでしょう。