京都で年末の花式はじまる
師走の京都。市内のあちらこちらで『花式』を見かけるようになり、町の人たちは「長らく見ることが出来なかった風景。伝統を重んじるこうした動きは喜ばしい」とかつての年末の風物詩復活の動きを喜んでいた。
市内各地で復活した花式(京都市内で撮影)
花式は花の代わりに球を供える儀式で、昭和中ごろまでは年中を通して節目節目に行われていた京都市内特有の文化。正月に始まり、春の桜の季節や夏の地蔵盆、祇園祭や五山の送り火はもとより、秋祭などでも球を備えることが一般的だった。だが、以前は1町内に1軒はあったとされる『玉屋』の減少が続き、各町内会は球の確保が難しくなったため、最近ではほとんど見かけることもなくなっていた。
昭和初期に起源を持つこの花式は、「完全球体」であるビリヤードのボールを備えることで、町内安全・家庭円満を願う縁起物として継承してきた。だが、昭和の後半には簡略化されて庭球、卓球の球で代用するなど形骸化も進んでいた。さらにこれらの代用品では重量が不足していたため、風に飛ばされるなどのトラブルが相次ぎ、徐々に姿を消し淘汰されることとなった。
ところが今年の年末は京都市内各地で花式を復活させる傾向にあり、これについては「サイクロップの普及にともない、球の余剰を抱える玉屋が増えたことが原因ではないか」との見方が強い。
古都花式保存会も長年休んでいた活動を再開し、「今後は国内各地への普及や海外における本来の花式という儀式的意義の重要性を伝える活動も行っていきたい」(古都花式保存会第十三代会長)と意欲を見せる。
玉のみやことして栄えた古都で復活した伝統行事・花式。迎える皇紀二六七六年(西暦2016年)は明るい年になりそうだ。