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Race To Eleven
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毎週火曜日連載・ビリヤードの長編連載小説です

第101話 バトル・イズ・オーバー
Race To Eleven   第六章 偽りのマスク
第101話 バトル・イズ・オーバー


 店主は白いタオルで顔をぬぐいながら、手洗いから出てきた。
 顔面蒼白な状態からはやや血色が戻ってきた様子で、口元にかすかな笑みを浮かべていた。
 
 「大丈夫か?」大河は訊ねた。
 「ああ、長いビリヤード人生の中で、吐いちまうなんて、最悪だ。すまん…」
 「オレは… あったゼ。 もっとも、実際に吐かなかったがね…」
 大河の店主を蔑む言葉に、彼は口をぽかんと開けていた。
 
 大河は続けた。
 「ただ、これを乗り越えたその先には…」
 「なんだ? 言ってくれ。この先は何があるんだ?」
 「この試練を乗り越えると、全く異次元の世界が待ってる。これだけは言える」
 
 店主はキッチンの方に向かうと、熱いコーヒーを2杯煎れた。その1杯を大河に差し出し、二人が賭けていたもののうちの1つを掴んで大河に差し出した。
 
 「コイツはお前のもんだ。お前の方が似つかわしい」
 大河は差し出されたタイガーマスクの面を、片手で鷲掴みにして受け取った。
 
 「厚かましい願いだが、これで全国の子供たちに勇気を与えてやって欲しい。頼む…」
 店主は深く頭を下げた。
 
 しかし、大河はそんな店主をよそにこう言い放った。
 「何のことだ? オレがなぜそんな偽善者のマネをしなきゃならない? オレはオレのやりたいようにやるさ」
 「やりたいように?」
 「ああ、最初からそのつもりだ。これからビリヤード界をアッと言わせてやる。しばらくの間、コイツはオレの復讐劇のために活用させてもらうぜ」
 「復讐って、あんた…」
 「これは二人だけの秘密だ。誰にも言うんじゃないぞ。わかったな」
 
 そう言い残すと、大河は大金とキューケースと身の回りの荷物をさっさと片付け、何も言わずに店を出て行った。
 
 
 「もっと短いゲームにしときゃ良かった。それにしても今日は何という日だ? アイツは凄い。どんな恨みがあるのかは知らんが、とてつもなく強い」
 徐々に体力を回復させてきた店主は、暗がりの中でしばらくの間、たたずんでいた。
 
 
 
 

  • 2014年3月25日(火) 07:00 by 芦木 均

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